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Page15 「麻中之蓬」 杉﨑南路

ココロノオト~season2~


今回ブログを担当します、愛知県立西尾高等学校出身の杉﨑南路です。上手く纏められず長くなってしまいましたが、気合を入れて書いたので是非御一読ください。

 

 「『adopt(採用)』から『adapt(適応)』へ」。

 

 これはコロナ禍で入部が遅れていた時に課されたレポートで、目を引くことを書いて何とか第一印象を良くしようと僕が徹夜で捻り出した格言です。現代人がスポーツと向き合う際の問題点への解決策として、「自分の考えにプラスαするのみでなく、異なる価値観そのものに自ら馴染んでいく柔軟性が必要だ」という意味を込めて考案しました。しかし、ここでの4年間を振り返ると、この言葉に最も影響を受けたのは他でもない僕自身だったと強く感じます。

 

 将来の目標を音楽関係の仕事から教員に切り替え、真剣にサッカーに取り組み始めたのは高校に入学してからでした。当然クラブチームに所属した経験もなく、超低レベル(ボールを浮かせられればラッキーくらい)からのスタートだったことから、自分の成長をすぐに実感できました。試合に出られるようになり調子に乗っていたこともあって、「もっと高いレベルを知って、深い指導ができるようになりたい」と思い、中京大学体育会サッカー部への入部を決めました。

 

 実力差があることは承知の上で臨んだ入部初日、あまりに何も出来ず自信を失い、僕の大学サッカー生活の展望は「上のカテゴリーなんてとんでもない、4年次の終盤に年功序列で試合に出られればラッキー」に決まりました。おそらくこの時点で部員の多くは「こいつはすぐに辞めるな」と思っていたことでしょう。同期のGKで無名校出身なのは僕だけで、技術云々よりそもそもサッカーと向き合ってきた時間に天と地ほどの差がありました。コーチや仲間が進んで話しかけてくれてすごく居心地が良かった反面、持ち前の卑屈さを発揮して「経歴の物珍しさから構ってくれているけど、選手としてはあまり期待されていないんだろうな」と少なからず感じていました。それでも無関心ではないだけマシだと開き直り、色々な選手のプレーを真似してみたりしながら、日々の練習の中で少しずつ自分の強みを見つけることに力を注ぎました。

 

 そんな中、偶然が重なって、3年次に中京大学FCに一時的に在籍することになりました。言ってしまえば入部時から5つ上のカテゴリーへの昇格で、今までは別世界の住人とまで思っていたような選手達とのプレーに心躍らせつつ、自分の力不足をより痛感する日々を送りました。それでもなんとかこのチャンスをモノにしようと必死に食らいついて、残留が決まった日には「とんでもないことが起きたぞ」と興奮して両親に電話をかけたのをよく覚えています。努力が報われて、尚且つ報われるに足る努力をすることができたという事実が大きな自信になりました。慣れないスーツを着て、人生初の全国大会の会場へ向かう飛行機に乗っていると、なんだか自分がすごい選手になれたような気がしてとても気分が高揚しました。中京大学FCでの一年は特に自分の印象に残る、実り多いものだったと感じています。

 

 4年次にはある程度自分のプレースタイルを確立し、コンスタントに試合で見せ場を作ることもできるようになりました。1年次の時の自分にこのことを話したとしたら、手放しで喜ぶどころか、そもそも信じてもらえないでしょう。それでも「あのプレーがいけなかった」「あの場面はもっとやりようがあった」など考えるようになり、チームメイトとの話し合いも増えました。この変化が生まれたのは、自分がそれまでの3年間で苦しみながらも逃げずに環境に適応してきたからに他ならないと思っています。

 

 入部以前の僕はどこか楽観的で、失敗しても「運が悪かった」で片付けたり、大した努力もせずに自分を大きく見せようとばかりしていたように感じます。しかし、サッカー中心の人生を送ってきた人や本気でサッカーを仕事にしたいと思っている人と同じ環境に身を置き、同じ基準でプレーする中で、間近で感じた彼らの熱量や気迫、必死さに衝撃を受けました。それと同時に、「今までの自分は甘かった」「変わらないとマズい」と初めて本当に、心の底から感じました。ここでの4年間は、今までの人生で一番真剣に自分と向き合った期間であると断言できます。教員採用試験の勉強に取り組む中で両親に「こんなに頑張っている姿は見たことがない」と言われた時、自分の選択は間違っていなかったのだな、と感慨深い気持ちになりました。

 

 挫折と脱水症状を重ね、振り返れば苦しい、キツさに楽しさが伴っていないと感じることも多かった大学サッカー生活ですが、その中で培われた精神力や達成感、それを仲間と共有した経験は一生の財産です。ありきたりな結論ではありますが、最後までやり切った今だからこそこれらの大切さがよく分かります。

 

 コーチの皆さんへ。自信のなさからメンタルやコンディションをなかなか保てず、不甲斐無いプレーでたくさん迷惑をかけました。それでも最後まで見捨てずにアドバイスをくださったり、長所を認め、時に厳しい言葉で道を正してくれたこと、本当に感謝しています。カテゴリーでの関わりがなかった方々も、挨拶ついでに一声かけてくださったりしただけでも嬉しかったです。お世話になりました。

 

 後輩のみんなへ。もし悩みを抱えていたり現状に不満を感じている人がいたら、是非僕の言葉を参考にしてみてください。自分を強く持つのは大事なことですが、それで凝り固まった考えに陥ってしまうくらいなら、いっその事固定観念を捨て去り、流れに身を任せてみることで気持ちが楽になったり、新たな発見をすることができると思います。「自分を変える」というと難しいことのように感じますが、「目標となる人や集団を見つけて、それに合わせる」と考えれば、少し現実的に思えるのではないでしょうか。あと純粋に折角頑張って考えた言葉なので使って欲しいです。ストーンの意味を3年になって知った僕でも上手くいったので、きっと有用だと思います。

 

 同期のみんなへ。お互いお疲れ様。一緒にサッカーをしている時間はもちろん、練習後にアドバイスしあったり、一緒にご飯を食べたり、時に協力して単位を死守したりする時間がとても楽しく、充実していました。自分はあまり活発な性格ではないので、頻繁に外に連れ出してくれることがとても有り難かったです。特にGKの5人とは互いに切磋琢磨しながら、良い関係を築けたと思っています。必ず行くので、またいつでもご飯に誘ってください!

 

 家族のみんなへ。自分たちがやったことのないスポーツで、しかもピアノをやってるくせに突き指ばかりする息子の決断を尊重して、試合を遠くまで観に来てくれてありがとう。なんとか頑張っている所を見せたいと思う気持ちが大きなモチベーションになりました。皆のサポートのおかげで、サッカーを含めた今までの経験全てが背中を押してくれて、暖かく幸福な路を歩めています。ありがとう!

 

 以上、僕のサッカー人生を振り返って、でした。御高覧ありがとうございました。

 

 この部活に入って、皆さんと出会えて、本当に良かったです。